コンサートの感想文なのかゲームの思い出なのか…
ドラクエコンサートは2回目。しかも今回は私にとっては思い出が多い1、2、3が演目になっている。
誰しも「マイファーストドラクエ」「マイベストドラクエ」を持っているはず。私のそれはドラクエ3である。
子供の頃の事を思い返すと、今の子達のように習い事で超多忙、ということもなく、ことに私は当時でもだいぶヒマな子の部類に入っていたと思う。
だからだったのか、子供の感性ゆえなのか、私はドラクエに夢中になった。一度、妹がファミコンを跨ぐ時に蹴ってしまい、ぼうけんのしょが3つとも消えた時こそが人生で初の絶望だったと思う。あの時のBGMを聴いた時の、心臓が収縮しているのを実感するかんじ、今でも忘れられない。
行方不明になっていた父、オルテガの最期に立ち合うシーンではゲームで初めて泣いたし、その後ゾーマと戦う時はコントローラーを持つ手が震えた。
当時は「ふくろ」システムはなかった為、ひたすら荷物をやくそうに特化し、いつ壊れるともしれない過信は禁物のMP回復アイテム「いのりのゆびわ」でゾーマと対峙する前にMP回復を図る。
コマンド入力時も敵が攻撃してくるアクティブタイムバトルではないのに、とにかくゾーマは恐かった。それにしても、「ぼうぎょ」コマンドを先頭3人まで入力後、キャンセルしてから再度コマンド入力すると、最初の「ぼうぎょ」コマンドも有効になるというあの裏ワザ?はバグだったのかなぁ?
とにかく、私はドラクエの全てが大好きになった。シナリオはもちろん、鳥山明のイラストも、すぎやまこういちの音楽も。
何かを好きになると、もっと知りたい、もっと近づきたい、と思うもので、グッズや音楽やイラストで自分の身の回りを埋め尽くしたい欲望にかられる。
とはいえ、当時はインターネットなどなかったし、そもそも何を、どこを調べれば知りたい情報に辿り着けるのか?それを知ることすらままならなかったのである。
そうなると、ただただ恋い焦がれるだけ。エロ本コーナーに近い場所に陳列されていたゲーム雑誌を小学生の自分が買える、という発想もなく、友達や少年ジャンプに袋綴じされていたわずかばかりの新作ゲーム情報をすするばかりであった。
そんな境遇だったので、ドラクエ3のパッケージイラストがプリントされた下敷きを、友達の案内で近くの百貨店まで買いに行った時の感激は忘れないし、遠足のバスの中でドラクエ3のサウンドトラックのダビングテープを持ってきた子がいて車内で流れてきた時の衝撃(家のラジカセで録ったときのみたいに、コマンド入力時のピコピコ音がない!)、あまつさえ帰りのバスで聴いた2本目のテープがクラシックだった時は「こんな贅沢な演奏あるか??」と衝撃でチビる寸前であった。
このダビングテープは、同級生の大物芸能人のご子息M君所蔵のCDが元のようで、「東京までこのコンサートも聴きに言ったんだって」と友達から教えてもらった。
世の中、情報とコネとお金があればなんでもできるんやな…と意外に早い段階で世の中の真理に辿り着いたと同時に、羨ましさで「お金持ちめ~」とギリギリ歯ぎしりした。
ともあれ、私も(親が)ネタ・コネ・カネ3点併せ持つ無双のM君のダビングテープのダビングできる事となった。
子供というのは、意外と保守的な所があって、私もはじめはゲーム音源の方が馴染みがありよく聴いていたのだが、クラシックの音の表現の細やかさ、深みに気づき、次第にクラシック音源ばかり聴くようになった。
ソニーのウォークマンで毎晩寝入るまで聴いていた。音量の調節を誤ってジパングの最後の盛り上がりとゾーマのテーマの出だしの大音量になる部分でビックリして跳び起きる、というミスを何度か冒しながら。
やがて「はぁ~、お金持ちになりたいなぁ~、そしたらドラクエのクラシックコンサートに行けるのに…」と思うようになった。
ただ、M君が東京まで聴きに行ったという話が印象に残っていて、然るべき情報収集力、経済力がないと無理なものだ、とこれについてはあまり真剣に調べたりはしなかった。
そんな幼き頃の憧れ、ドラクエコンサートが当時の自分と同じような年頃の子を持つようになってもまだなお全国で公演されているとは…。
今なら、行ける。チケット予約さえ成功すれば、あとは良い焼肉屋さんに行く時くらいの勇気さえあれば、行ける。
前置きが「本題か」くらいに長くなってしまった
さて、前回初めて行った神戸のドラクエ4、5、6のコンサート同様、今回の奈良も満員御礼であった。
それにしても驚くのは、こういった過去の素晴らしい記憶というのは、けっこう思い出補正されていて、実際に見たり聴いたりすると「あれっ?思ったほどじゃ…ない」とガッカリする事も多いのだけど、それがまったくなかったのである。
あの頃に聴いた音楽そのまんまが、そこにあった。
楽譜も同じなのだろうから、当たり前といえば当たり前なんだろうけれど、嬉しかった。
関西方面の公演は、大阪シオンウィンドオーケストラが演奏することが多いようだ。指揮者も2回聴きに行った2回とも西村 友さんだった。
MCも西村さんなのだが、彼もまた同じドラクエ世代なので、話すエピソードに会場全体が「わかる…わかるわ~」という空気になるのが伝わる。
私は一人で行くのだが、友達と連れ立って来ている人達が開演前や休憩中に当時の思い出話を花を咲かせたり、帰りがけに「はぁ~、やっぱゾーマのとこヤバい、最高やな」と言いながら歩いているそばを通るかかると思わず「いや、ほんまそれですよね!」と乱入しそうになるが理性でグッとこらえて静かにしている。夫は「乱入してきたらええやんけ」と言ってきたが、興奮で顔を赤らめ小鼻を膨らませたおばさんが唐突に話しかけきて、通報されるやもしれないのに無責任な。奈良の交番まで迎えに来てくれるんか?
ともかく、私達のややもすると何割り増しかで上方修正された思い出を、割り増し分込みでそのまま再現してくれる、ドラクエコンサート、最高なのである。
でも、演奏者の個性も垣間見えて、それもまた楽しい。
大阪シオンウィンドオーケストラのタンバリンは奈良公演の時に見ていたら、一回の公演で3人で分業されていたのだけど、踊りださんばかりに腰が入った人、タンバリン叩き機(褒め言葉)の人、「タンバリンなのに目立っちゃってスミマセン…なるべく大人しくしてますんで」(といいつつ目立っている)と言っているかのように控えめを心掛けているように見える人、タンバリン1つでもいろいろあるんだなぁ…というところも大変面白かったです。
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